出会い系では珍しいことではないのかもしれない。某サイトでは、中高年の既婚者の会員が増加傾向にあるらしい。不倫願望を抑えきれずに異性のメル友を見つけ、ネット上の恋人にして密やかな擬似恋愛を楽しむ。そして機会があれば・・・。そんな期待を抱いて出会い系に来る既婚者は俺だけではあるまい。
中高年になると、どういうわけか不倫願望が増すようだ。雑誌やネットの記事を読んでいてもそれは手に取るようにわかる。あるSNSのアンケートでは、中高年の男性の八割がこんな願望をもっているらしい。
「妻以外の女とセックスする機会があれば、してみたい」
理解できる。
最初は広島の独身OLとメール交換したが、私には彼がいるから交際に発展することはないからそのおつもりで、と最初に釘を刺された。俺はすぐに見切りをつけて別れた。メル友以上に発展する余地のない関係では擬似恋愛にもならない。ぜったいに不倫したいと思っているわけではないが、もしかしたら不倫してしまうかもしれない、といった微妙なスリルを味わいたいのだ。
それを機にメル友の探し方を変えた。俺と同じように潜在的な不倫願望を持った女性にターゲットを絞る。要は人妻だ。夫がいるのにメル友を探す女に不倫願望がないわけがない。
最寄りの出雲市に住む既婚女性と知り合った。名前は仮に京子としておく。京子もメル友を募集していた。相手は女性でも構わないなどと掲示板に書いてあったが、メールのやりとりをするうちにどきどきするような刺激が欲しいと本音を漏らした。最初から男性を探していたことは間違いない。
お互いの本意を探るような会話が続く。
あるときこんなジャブを打ってみた。
「世間には不倫する人がいますけどどう思います? 京子さんは不倫に抵抗はありませんか?」
「相手次第です。不倫の抵抗感を打ち消してくれるような恋に墜ちたら、その人に飛び込んでしまうかもしれません」
俺はその相手になれるだろうか。
「善之さんは? 奥様以外の女性とお付き合いしてもいいの?」
ここが勝負どころだと思う。ここで曖昧な書き方をしてしまったら、二度とこの手の会話は生まれないかもしれない。俺は心を決めた。
「京子さんのような女性なら、心が動いてしまうでしょう」
十分ほど返事が来なかったので脈はないと思ったが着信を知らせる音がした。
「どうしてそんなこと書くの? なんだか変になりそう」
すかさず返事する。
「会いませんか」
「はっきりと言ってください。もっと私の心を動かして」
「京子さんが好きだ。京子さんに会いたい。京子さんと結ばれたい」
出雲市内で会った。軽く食事したが、お見合いのようなもどかしい会話が続き、やがて悩ましい沈黙が来る。俺は伏せた睫毛に小さな声で問いかけた。
「ホテルで休みませんか」
「え? そうですね・・・休もうかな」
牡と牝になって貪り合う。
人妻の肉壺は熱く、たぎっていた。
「気持ちいい! うう 気持ちいいよ、京子」
京子は壊れた人形のような姿態で身悶え、声をひっくり返した。
「あああんッ! くうううっ! 溶けちゃう・・・気持ちいい、気持ちいい」
既婚者のメル友を作ったらセックスに発展する可能性が非常に高い。
既婚者のメル友募集は不倫への入り口。
その門戸は君にも開かれている。