美緒は出会い系で知り合った。恋人が欲しくて、宇佐市近辺に住む可愛い女性に片っ端からメールしたのだが、最終的に美緒が引っかかった。この手のネットナンパをよくやるが、今回はメール返信率が極端に低い。町でナンパしたほうが効率的だった気もする。
「会ってみる? それともしばらくメル友でいる?」
さりげなく美緒の意向を聞いてみる。
「そうだね・・・とりあえずメル友でいいかな。様子見で」
何の様子を見るのか知らないが、美緒は俺との即会いを避けた。俺も同感で、今すぐ会う必要はないように思える。美緒は可愛いが、写真から受ける印象は俺の期待とはやや違い、ぐっとくる恋の予感のようなものに欠けていた。だがその点を除けば問題ないので、とりあえずメル友関係を維持してキープしようと考えた。
これも戦略だ。受験で言えば滑り止めみたいなもの。行きたい大学にすべて落ちたら浪人するか滑り止めに入学するしかないが、その大学に行ったら行ったで愛着もわいてくるものだ。好きでも嫌いでもない滑り止めを押さえておくことは重要だ。
たぶん美緒も俺をキープしているのだと思える。俺と適当なメール交換をしつつ、出会い系で他の男にアタックしているに違いない。ネット空間という相手の生の姿が見えない世界にいながら、さらにお互い別の方向を向いているわけで、男女の関係性はゼロに等しいと思うが、キープし合っている限り離れることはない。これが不思議なところである。
だが本命は見つからない。流れが俺にきていないのかもしれない。
そんな折、美緒からこんな電話が来る。
「ああ寂しい・・・世の中思い通りにならないなあ」
「どういう意味?」
「何でもない。そっちはどう? 思い通りになってる?」
まるでお互いキープ関係にあることがわかっているような口調だった。
「暇だからとりあえずエッチでもする? 身体だけの関係だからいいじゃん」
とセックスに誘ってみた。
「そうだね。吉報はエッチして待てって言うしね。違うか」(笑)
ホテルでセックスした。いわゆる即セックスというやつ。自暴自棄になっていたわけじゃないけど、お互いに奇妙な欲求不満がたまっていたようで、とても淫らなセックスをした。全身がお互いの体液でべとべとになるほど。その即セックス体験は刺激的だった。
「ああ・・・気持ちいい!」
「もっと・・やぁぁん・・・そんなに強くしたら狂っちゃう!」
美緒は意外に緩い女で、その日から毎日のように身体を許してくれるようになった。本命恋人への繋ぎの関係に過ぎないが、事実上のセフレ関係になっていたと思う。
俺は少しずつ本命を探す気力が失せていた。美緒も同じで、この次いつエッチしようかとか、どこでしようかとか、俺との遊びのセックスに前向きなメールをたくさん送ってくる。
このまま美緒とのセフレ関係を楽しんでもいいかな、なんて考える。正直本命恋人が見つかる気がしないし、見つかったとしても美緒とは別れられないような気もする。
「どう? 最近思い通りになってるか?」
「なってるんじゃない? けっこう楽しいわ」
そう言って美緒は俺のペニスを銜えた。