沖縄では美女のことを「ちゅらかーぎー」と呼ぶ。
あゆみはちゅらかーぎーだ。
出会い系で知り合って三週間ほどになるが、いまだにサクラじゃないかと思うことがある。
「あゆみはいつか俺を騙そうと思っているだろう」
「もういい加減にしてよ」
「俺と付き合うことでサイトからキャッシュバックがあるのか」
「もう・・・・怒るよ!」
折に触れてあゆみをサクラ扱いするもんだから、あゆみも食傷気味。
でもとりあえず美女に会えて良かった。これも某出会い系アプリを教えてくれた友人のおかげだ。
「この最新のアプリはおすすめだ。サクラも少ないし、普通の女性をゲットできる可能性が高い」
「少ないというだけでサクラに会う可能性もあるんだろう?」
「そりゃゼロじゃないけど、他に比べたらましだよ」
友人のおすすめの最新アプリを手に入れて、早速出会い系にチャレンジ。
すぐにあゆみを見つけた。俺と同じ沖縄市内に住む女性。こんな女性がなぜ出会い系にいる必要があるのかと疑いたくなるような美女だった。俺はすぐにサクラを疑い、警戒レベルを最高にしてメール交換を始めた。きっと期待させておいて会ってくれなかったりするのだろう。そのうち別のサイトに移ろうなんて奇妙なことを言ってくるかもしれない。
「俺と会ってくれるの?」
「とりあえずメル友から始めたいかな。君のことよくわからないから」
怪しい。
メル友になって何がわかるというのだろうか。会って直接会話した方が早いのではないか。俺にはあゆみが時間稼ぎをしているとしか思えない。時間が経つにつれてどんどん疑心暗鬼になる。
「車を持ってる?」
「ひとり暮らし?」
こんなことを聞くのは俺の経済状態を確かめるためだ。しかも文章が短く味気ない。SNSでチャットをやったことがあるが、あれに似ている。端的に必要なことしか聞いてこない。
―そろそろ見極めなくてはならない。このままずるずる行くとサクラの餌食になってしまう―
ところがこんなメールが来たんだ。
「ひとり暮らしで貧乏。おまけに車もないのか。だったら沖縄じゃどこにも行けないね」
「金がないんだから仕方ないだろう」
「わかった。あなたのおうちで食事しよう。私が何か作ってあげる」
少し安心する。サクラはこんな提案はしてこない。
いや安心するのはまだ早い。俺に睡眠薬を飲ませてその間に金を盗むかも。
だが彼女は普通に家にやってきてタコライスとそうめんチャンプルーを作ってビールで乾杯した。酔いにまかせて体を奪ったのを悔いたが、お金は請求されなかった。さんざん食べて、セックスしてその日は終わった。
それから交際が始まったが、特別問題は起きていない。
だが俺は信じられない。こんな美女が出会い系にいることが。そして俺の彼女になっているということが。
どういう状況になったら疑いが晴れるのか自分でもわからない。
美女とセックスできるのは快感だが、どことなく宙に浮いたような快感が俺を包んでいる。