長野市にいるセフレは、元メル友だ。
彼女は出会い系で知り合った三十三歳の独身女性。サイトのメール機能を使って会話をしていたときはおとなしかったけど、連絡先交換してLINEに切り替えてからは饒舌になった。絵文字混じりの華やかなメールが日に何通も送られてくるとワクワクしてきて、使い古したちんけなスマホがチャーミングなアクセサリーに見えてくるから不思議。スマホの中に人工的な女性がいるようだった。連絡先交換してよかった。
でもだんだんメールのやり取りが味気なくなってくるとのステップに進みたくなる。だが切り出しにくい。こんなとき出会い系サイト主催の「メル友合コンパーティ」のようなイベントでもあればいいと思った。普段メル友で付き合っている男女が一同に集まってパーティ。カップル誕生のためにサイト側もそういう協力をしてくれてもいいのに。
後日そのことを彼女に書き送った。
「サイト側が主催するメル友合コンのようなイベントがあったらいいのにな。そうしたらみんな気軽に会えるだろうね」
「だったら合コンやりましょう」
「会ってくれるの?」
「そういうイベントを作っちゃえばいいじゃない」
メール交換でだいぶ信頼感も増していたのか、デートへの流れが一気に開けた。きっと誘い文句がよかったのだと思う。ストレートに「会いたい」と切り出すより、最初は遠回りに気持ちを投げかける方が会いやすいのかもしれない。女性側も「会う」でなく「イベントをやる」のだという理由付けができて会いやすいだろう。
「会ったときすぐに顔がわかるように写メ交換しない?」
「いいよ。後で送る」
会うとなると何もかもが具体化する。それまでスマホの中で文章を作っていた人工的な女性に人格が宿り、三十三歳の人間の女性になって目の前に登場する。
小顔で可愛い女性だった。
「若く見えるね。まだ二十代半ばて感じだよね」
「そんなことないよ。けっこうヤバいよ」
実際に会ってみるとまったく別の女性に見えたが、メール交換していたことは事実なので、思ったほど距離感はない。
定期的に会うようになり、五回目のデートで肉体関係になった。
三十三歳だからさすがとセックス経験豊富で、ベッドではけっこう淫乱。ここでまた別の女性に出会った気がした。セカンド童貞状態が長かった俺は早漏気味だったけど回数を重ねるごとに上手になってきて、今では楽しくセックスするカップルになった。
スマホの中の人工的女性がひとりの女性に成長し、別の顔を持って目の前に現れ、ベッドでも別の女性に変身する。
メル友で出会った女性との交際は刺激的で楽しい。